2008.06.19 Thursday
第16回 もう一度あけてくれ

第一次怪獣ブームをまきおこすきっかけとなった「ウルトラQ」は、最初の放映の時、編成の都合で28番目の最後の1本だけが放送されませんでした。ただ、今と違って情報のゆきとどかない昭和41年ですから、一介のジャリにすぎない私はそんなことを知るよしもなく、「Q」は27本、と思っていたわけです。
ところが1年ぐらいあとでしょうか、夕方何気なく再放送の「ウルトラQ」をつけると、いきなり見たことのない、しかも「悪魔っ子」ぐらい気持ちの悪い、かつSFな話が!!ゲゲゲゲゲッ、と驚く夏の夕暮れ。この話が、第28話「あけてくれ」でした。このときの衝撃が、私の中に「ウルトラQはまだもっとあるんじゃないか妄想」を、強烈に形成します。
後年「アウターリミッツ」を再発見したときに、やっぱり外国にウルトラQがあったのだ!、と思いました。イギリスの「Out of This World」もそーなんじゃないかなーと推測したりはしてるんですが、ただまあ、数年前の本家のリメイクは別物でしたし、SFマインドの細った昨今の新作では、「Q」にはならないだろうなー、と思っていたわけです、ドクター・フーの第3シリーズ第10話「Blink」(2007)を見るまでは。
この回に出る怪獣は、ただの天使の像です。正直、写真だけ見てもぴんとこず、欧米のフィギュアショップで一番に売り切れるのがさっぱり分りませんでした。ですが、見た後では最低4ヶは欲しくなります。
いやー造形の仕事してる私がゆーのもなんなんですが、大事なのはおはなしと状況で、キャラクターのデザインなんてほんとは、もんのごっついどーでもいーことなんじゃないでしょうかねー。
今回は、宇宙開闢の頃から存在するロンリー・アサシンという怪獣が、ロンドン廃園の”嘆きの天使像”に擬態した姿で現れるのです。此奴は必殺技クォンタム・ロックで身をまもり、狙った相手を過去に転移させてその時空ポテンシャルエネルギーを食う、などという量子論を活用したバカSFアイデアの結晶です。襲ってくるときも、ものすごくバカげているのに怖い、という。
本編も、(勿論全部見たわけではありませんが、)ドクターフー46年の歴史上で最高の傑作と思われます。ドクターはほとんど出ず、現代の女の子に奇怪なかたちで謎のメッセージが届き続けるストーリーはよくできたホラーな感じですが、そこへ1本によくこれだけ、というくらい次々に量子論と時間SFアイデアが連発されます。ヒューゴー賞ノミネートも当然でしょう。
いやー、もし世の中がもう少し違って、いまでも日本で「ウルトラQ」がちゃんとSFとしてつくられていたら、こんなのができていたかも、と、トホホ思ったりもしました。
さらに驚くことに、、開巻17分あたりで、今回の主役の女の子が雨の中を警察署に入っていく場面でかかっているBGMが、ウルトラQのテーマにそっくりなんですよ!
ホンの短い時間ですが、あまりにもデキすぎなので、びっくり。作曲者が意識したのでは無いと思うんですが、これで私の「もっとある妄想」がさらに強固なものになったのは言うまでもありません。
この回のシナリオを書いたスティーヴン・モファットは、2005,2006に担当した回でドクター・フーに2連続ヒューゴー賞をもたらした偉才。今年の「silence in library」前後編も好調です。再来年の第5シリーズからはエグゼクティブ・プロデューサーになるらしいので、期待するのであります。

